バトル・ニュース

2011/09/14


パッケージプロレスとしての差

 11日の日曜日は後楽園ホールで、全日本プロレスと新日本プロレスの大会をダブルヘッダーで取材だった。
 昼の全日本の取材を終えて、昼飯を食べようとホールを出ようとすると、1階の当日券売り場には長蛇の列が出来ていた。正直言って、これにはちょっと驚いた。

 いまの新日本に勢いがあるのは間違いないが、その勢いの最大の原動力と思われる現IWGPヘビー級王者の棚橋弘至は、この日メキシコ遠征中のため欠場だった。
 新日本の今シリーズ、最大の山場となる6・19神戸ワールド記念ホール大会では、今年の『G1クライマックス』で優勝した中邑真輔が、棚橋のIWGP王座に挑戦する一戦がマッチメークされている。

 大会が神戸なので、関東の後楽園ホールに観戦に来た大半のお客さんは棚橋vs.中邑を会場(神戸ワールド)で観られないと思われる。それだけに、ここは前哨戦として棚橋と中邑のタッグ対決でも組まれているのなら、せめて棚橋vs.中邑の“触り”だけでも味わおうと、11日のホール大会に足を運びたくなるのは分かる。
 だが、11日のホール大会を棚橋は欠場したため、メインのカードは中邑&田中将斗&高橋裕二郎vs.後藤洋央紀&MVP&内藤哲也の6人タッグマッチだった。中邑vs内藤は『G1』決勝のカードだし、内藤vs.裕二郎は6・19神戸でシングルマッチが組まれているので前哨戦。MVPと田中は因縁が勃発しているので、決して「テーマがない」試合ではないのだが、最近ではIWGPヘビー級のタイトルマッチや『G1』公式戦も行われるようになった新日本の後楽園大会のメインカードとしては、やや弱いように感じていた。

 もちろんこの日は、メインのほかにもApollo55が保持しているIWGPジュニアタッグ王座に、最近その存在感がグッと増したTAKAみちのく&タイチの鈴木軍が挑戦する一戦や、因縁が激化している上、神戸大会に向けてのダブル前哨戦となる鈴木みのる&ランス・アーチャーvs.真壁刀義&井上亘といった注目のカードもラインナップされていたが、そうは言っても最近関東圏でビッグマッチが連発されていただけに、この日の客足は厳しいかなと思っていた。
 ところが、どうだ。当日券売り場には長打の列。フタを開けてみれば主催者発表で1800人。満員マークこそつかなかったが、見た目だけで言えば満員マークを付けても、文句ないくらいまで客席は埋まっていた。

 これはもう「棚橋が見たい」とか「このカードが見たいからチケットを取る」とかではなく、いまの新日本は面白い、見て損はないという安定感というか、ブランド力がついてきた証拠なのかもしれない。
 確かに11日の新日本後楽園大会を見終えて、棚橋がいなかったからといって「物足りない。面白くなかった」と思った観客はほとんどいなかっただろう。ブランドにあぐらをかくことも、エースにすべてを依存することもなく、全員野球ならぬ“全員プロレス”で来たお客さんを満足させる新日本は、さすがは業界のトップである。

 一方、昼の全日本だが、単純に並んだカードだけ見れば夜の新日本よりも面白そうに思えた。ジュニアリーグの開幕戦ということもあり、公式戦3試合はどれも絶対にハズレがないと思われる好カード。それに加え、第1試合からいきなり諏訪魔vs.ノアの秋山準によるタッグ対決、『ALL TOGETHER』でもその存在感を発揮したKENSOは、新ユニット「TEAMビチッ!と」の初陣、ワイルドを賭けて激突する征矢学と大森隆男の前哨戦と、バラエティに富んだラインナップだ。
 実際試合を取材していて、どれも面白かったのだが、この日は筆者の高校時代の友人がたまたま観戦に来ていた。この友人は高校時代はジャンボ鶴田の大ファンで、よく一緒にプロレスを観に行っていたかなりのプロレスファンだったのだが、高校卒業後は会場に足を運ぶことはほとんどなく、ちょろちょろ情報を耳に入れる程度だったらしい。

 そんな友人がかつて大好きだった全日本プロレスを久しぶりに観たわけだが、その感想を聞いてみたら「正直微妙だった。面白くないわけじゃないけど、何かKENSOとかワイルド対決とか、みんな笑って観てたけど、全日本っていつからそんな笑って観るプロレスになったのかなって? 昔の全日本も悪役商会とか笑えるのはあったけど、そういうのは違うじゃん。あと武藤って出てないの?」という応えが返ってきた。
 思わず「なるほどなぁ」と思ってしまった。普段から全日本を見たり、情報を追いかけていれば、いまのKENSOや征矢vs.大森のストーリーは面白く見られると思うのだが、久しぶりに全日本を見るような人から見ると全日本に“笑い”があることに違和感があるらしい。さらにケガをしているわけでもないのに、武藤敬司が出ていないことにもイマイチ納得がいかないらしい。良くも悪くも「武藤全日本」というイメージはかなり定着しているようだ。

 その点新日本は「棚橋新日本」までのイメージはあまりない。新日本はあくまでも「新日本プロレス」というブランドであり、1つのパッケージとしてのイメージが強い。第1試合に黒いショートタイツのヤングライオンが出て来て、ベテランがいて、ヒールがいて、ジュニアの試合があって、有名どころの選手が終盤続々出てくる……これが新日本のイメージ(パッケージ)だ。
 パッケージプロレスは武藤が目指していたことだが、いまの全日本は新日本と比べると、まだまだパッケージとしてまとまっていないように思える。ただ個人的にはいまの全日本はかなり面白い。KENSOや征矢vs.大森もいまは笑いが多いかもしれないが、“化ける”可能性は十分ある。そして、興行が1つのパッケージとしてまとまり出せば、全日本はさらに面白くなるはずだ。