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2011/08/24


ダンプ松本から感じた昭和レスラーのプライド

 21日に新木場1stRINGで行われた『ゆずポン祭4〜ゆずポン夏の納涼フェスタ〜』。グラレスラー愛川ゆず季の自主興行としてすっかりお馴染みだが、『ゆずポン祭』での愛川は基本的に普段のスターダムではあまり絡まない選手と対戦するのがコンセプト。
 ということで、今回は極悪同盟のダンプ松本との対戦。ヒールといえば2・6の第2回大会のときに堀田裕美子と対戦しており、その際は散々反則攻撃をやられた愛川が電光石火のラ・ゆずヒストラルで勝利したあと、「オイ、堀田裕美子! 反則ばかりやりやがって! 勝ったのは私だ!」と怒りを爆発させて新しい一面を見せたことがあった。

 全盛期は鳴く子も黙る極悪ヒールのダンプだが、最近は正直ずいぶんと丸くなった印象がある。ある程度の反則攻撃やセコンドの介入などはあるだろうが、いまや中堅選手並みの安定感が出て来た愛川にとって、ダンプには失礼ながらそう難しくない相手だと思っていた。
  だが、ダンプはそういう周りの反応を敏感に察知したのか、全盛期のような残忍な凶器攻撃で見ている者に恐怖を与えるのとは別の方法で、ダンプ松本らしさというか、昭和レスラーのプライドを見せた。

 プロレスデビューして以来、愛川の最大の武器であり、その“音”とか“様になり具合”で見た者に説得力を与えていた蹴り、いわゆるゆずポンキックを何発食らってもダンプはビクともしないし、なかなかダウンしなかったのだ。
 テコンドー経験者でもある愛川は、やはり自信のある蹴りを中心に試合を進めていくタイプ。蹴っても蹴っても倒れもしないし、後ろに下がることすらしないダンプを相手に、愛川はパニック状態になってもおかしくない。試合は完全にダンプの掌の上だった。

 例えばいまだ現役の長州力や藤原喜明、さらに引退したとはいえアントニオ猪木や前田日明のように、いまでも見ている側が時折「怖い!」と思ってしまうくらいの“凄み”を持っている昭和のレスラーは多い。
 恐らくリング上の愛川は、そういう“凄み”みたいなものをダンプから感じたのではないだろうか? 言葉にこそ出さないが、「グラビアアイドル風情がプロレスを舐めるんじゃねぇ!」という気持ちがダンプにあった気がしてならない。

 愛川は決してプロレスを舐めているわけではない。ただ、もうすぐプロレスデビューから1年が経つが、ここまで順調過ぎるくらい順調だったのは確かだ。レスラーとしての評価も高いし、芸能の仕事も明らかに順調そう。チャンピオンにまでなったし、年末のプロレス大賞では何らかの賞を獲るのは確実だろう。
 大会終了後に小川代表も言っていたが、そんな愛川にとって今回のダンプとの試合は、プロレスラーになって初めての試練となった。愛川ゆず季のプロレスラー人生の中で、この試合が1つのターニングポイントになりそうだ。
 この試合を機に愛川のプロレスへのモチベーションが下がってしまう可能性だってあるし、デビューからわずか1年弱で安定感すら漂っていた愛川のプロレスが、ここでまたひと皮剥けるかもしれない。

 プロレスは難しいもので、例えば愛川のタッグパートナーである美闘陽子の蹴りは、愛川の蹴りと比べると一見迫力不足に思えるのだが、選手に聞いてみると美闘の蹴りはかなり“効く”らしい。さすがは極真空手全国2位の実績を持つ美闘だけに“効かす蹴り”はお手の物なのだが、実はそういう蹴りは見た目が地味だったりするわけだ。
 じゃあ愛川の蹴りは見た目が派手な分、効かないのかというと決してそういうわけではない。とくにダンプ戦の愛川は途中から意地になったのか、回し蹴りもハイキックもカカト落としも、すべてダンプの頭部に集中していた。関係者の話によると、試合後のダンプはかなり“足にきていた”らしい。つまりダンプも決して余裕で愛川の蹴りを受け止めていたわけではなく、意地で我慢していたのだ。
 だが、愛川vs.ダンプ戦を見た観客の多くは、恐らく「ゆずポンキックって効かないんだな」と思っただろう。これも昭和レスラーのプライドだ。