バトル・ニュース

2011/08/17


新しい風景が出来つつある全日本に、良くも悪く馴染まないKENSO

 TARUによるスーパー・ヘイト暴行事件により、全日本プロレスは大きく変わらなければならなくなった。ヒールユニットだったブードゥー・マーダーズは解散し、TARUは事実上追放となった。鈴木みのるもたまたま時期的に契約満了だったため、全日本を離れることになった。
 ブードゥーや鈴木のようなヒールが、プロレスの興行において果たす役割は非常に大きい。いまの新日本プロレスを観れば分かると思うが、単にヒール=悪いことをするだけでなく、飯塚高史や矢野通のように反則攻撃こそするが、彼らが暴れ回れば回るほど会場は盛り上がる。

 現在の全日本プロレスにヒールはいない。だが、全日本プロレスとはそういう運命にあるのか、かつて長年ヒールではないが、反体制側として全日本マットを盛り上げてきた天龍源一郎がSWSに移籍した際、かなり多くの選手も全日本を離脱して窮地に追い込まれたのだが、残っていた三沢光晴さんや川田利明、小橋建太ら若い選手が、ジャンボ鶴田さんやスタン・ハンセンといった巨大な壁に向かっていくことで全日本を甦らせたことがあった。
 それと似たように、諏訪魔という強いチャンピオンを頂点に、カズ・ハヤシや近藤修司、船木誠勝といったベテラン選手が脇を固め、そこに真田聖也、征矢学、KAI、大和ヒロシといった若い選手がぶつかっていくという構図が出来つつある。ベビーvs.ヒールのような分かりやすい構図ではないが、試合内容で“魅せる”ことは出来る。

 7・31愛知大会では真田が諏訪魔の三冠ヘビー級王座に挑戦。武藤ゼンニッポンの生え抜き選手同士による初の三冠戦がメインを飾った。さらに8・13後楽園大会ではKAIの世界ジュニアヘビー級王座に同期の大和が挑戦。これまた武藤ゼンニッポン生え抜き選手同士の対決が見事にメインを飾った。
 再出発をした全日本は少しずつ“新しい風景”が出来上がりつつある。ただ1点気になるのはKENSOの存在だ。

 KENSOは面白い存在なのは間違いない。ヒールというわけではないが、明らかに異質! 同じ新日本出身でありながら、KENSOから武藤イズムを感じる部分がほとんどない。一応どちらもワールドワイドな活躍をするレスラーというのが共通点で、現在KENSOとグレート・ムタは世界タッグ王者コンビでもあるのだが、徐々に出来つつある全日本の新しい風景にKENSOがどう入っていくのかが想像しにくいのだ。

 例えば8・13後楽園大会で行われたKENSOvs.大森隆男の一戦は、再戦ということもあって"ファイブ・メンズ・ディシジョン・デスマッチ"なる特別ルールで行われた。何でも試合中に5人の選手が入ってきて、KENSOと大森どちらの選手に攻撃するかはその選手の自由。しかも凶器や反則攻撃もOKだという。
 このルールを聞いて、5人の選手の中にムタが入っていると想像したファンは少なくないと思う。KENSOのパートナーではあるが、毎試合KENSOはムタの毒霧の餌食になっていることを考えると、実にこのルールに向いている存在だ。

 ところが出て来た5選手は船木、西村、中之上、デュプリ、征矢だった。デュプリはWWE時代のKENSOのパートナーだし、タイツに「WILD」の文字が入っている征矢が大森を叩きのめして「お前は全然ワイルドじゃない!」と言い放つのは、なるほどと思わせるものがあったが、ハッキリ言って船木、西村、中之上の3選手は大森ともKENSOともほとんど関係はないので、なぜこのルールに採用されたのか意味が分からない。

 だったらムタを入れて、KENSOと共闘して大森を攻撃したかと思えば、KENSOにやっぱり毒霧を噴射するとか、そういう場面を見せてほしかった。さらに当日の昼には新日本も後楽園大会を開催していた。
 『G1』開催中ということもあり難しかったとは思うが、発表されたばかりの8・27『ALL TOGETHER』のカードに絡めて、棚橋弘至か高山善廣が5選手の中の1人に入っていたら、会場はどれだけ盛り上がっただろうかと想像してしまう。

 何をするかよく分からないKENSOだからこそ、ついついそういう突飛な想像もしてしまいがちなのだが、このKENSOを新生・全日本がどう使うのか、そもそも使いこなせるのか注目したい。ビチッとハマれば新生・全日本はもっと爆発する可能性がある!