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2011/07/13


IGFはこのまま猪木の理想郷となっていくのか

 10日に東京ドームシティホールで行われたIGFプロレスリングの『GENOME15』は、何ともデタラメな大会だった。IGFでデタラメと書いてしまうと、初期のズンドコ興行だった頃を想像してしまうかもしれないが、最近のIGFはズンドコからはかなり脱却している。
 いつ活動休止してもおかしくないなんて言われながら、発表されたカードが二転三転したり、新日本プロレスに喧嘩売ったけど相手にされなかったりといった、ズンドコっぷりがある意味IGFの魅力だった部分もあるが、かつて高田延彦を最強のプロレスラーにプロデュースした名参謀の宮戸優光氏が現場部長となり、エースが小川直也から元若麒麟こと鈴川真一に代わったのを機にIGFは大きく変わった気がする。
 
 猪木は常々「いまのプロレスには闘いがない。もっと怒らなきゃダメだ」と嘆いていた。そんな猪木が離れたあとの新日本は、“脱猪木”を徹底した。細部まで凝った演出、各レスラーの明確なキャラクター付け、2時間〜2時間半の中に盛り沢山のネタを詰め込みながらも、スムーズな進行により一切ダレた部分を作らないといった創意工夫により、いまや素晴らしいエンターテインメントを見せてくれる団体となった。
 生まれ変わった新日本の評価は高く、観客動員や満足度の高さを見る限り、日本プロレス界の盟主に相応しい団体である。

 そういう部分で見れば、IGFは完全に新日本とは真逆に路線だ。所属の日本人選手はストロングスタイルの象徴である黒いショートタイツに黒いシューズ。試合は技を出し合って競うのではなく、殴る蹴るが主体。しかも4・28『GENOME15』で行われた鈴川vs.ジェロム・レ・バンナ戦に至っては、プロレス初参戦となるバンナとなかなかルール面で合意が取れず、結局バンナはボクシンググローブを着用する“異種格闘技戦”ルールで行われることに。
 いざ試合が始まると、得意のマーダービンタで前身する鈴川に対し、バンナは過去K−1の試合で世界の強豪を次々にKOしてきたのと“同じようなパンチ”を鈴川の顔面に叩き込んでいくではないか。
 鼻血を出し、顔を腫らせながらも、鈴川は何度も何度も立ち上がりバンナに向かっていった。その姿はまさしく闘魂であり、これまで総合格闘技のリングでもなかなか証明出来なかった相撲の強さや凄さを証明する形になった。

 ガチか? ガチじゃないのか? といった簡単な言葉で表現するのは個人的に好きではないが、いまの時代こういう試合が見られるプロレス団体はIGFくらいのものだろう。7・10『GENOME15』で行われた鈴川vs.鈴木秀樹、そしてバンナvs.エリック・ハマーの試合も“それっぽい試合”だったが、その一方で藤波辰爾や初代タイガーマスクのレジェンドマッチがあったり、澤田敦士の暴走ファイト一辺倒の試合があったりするのだから、IGFは何とも不思議な団体である。 
 つまり、それこそがIGFのデタラメさなのだが、唯一無二の団体ということを考えれば褒め言葉と言っていい。

 そのデタラメさは昭和時代のプロレスに近い。あの頃のプロレスもとてもエンターテインメントとは思えない喧嘩越しの試合があったりする一方で、マスクマンによる空中殺法があったり、ベテラン選手による明るいプロレスがあったり、何だかよく分からない怪しげな外国人レスラーが来日したりしていた。
 プロレスとはそういった“非日常”を見せるものであり、リング上はやるかやられるかの闘いがなければいけない……いまのIGFは猪木が理想とする、そういったプロレスにだいぶ近付いているのではないだろうか。
 その証拠に一時期の猪木はとにかくプロレスに対して不機嫌で、ある囲み取材のときなんか関係者から「なるべくプロレスの話を振らないでください」というお達しが出たときもあったくらいだ。

 それがいまやリングトラブルが発生した際には、自らマイクを持ってトークで“場つなぎ”をしたり、新日本、全日本、ノアによるメジャー3団体オールスター戦『ALL TOGETHER』が行われる8月27日に、IGF両国国技館大会をぶつけてくるなど、プロレスに対してノリノリでイケイケなのだ。
 「猪木が笑えば世界が笑う」……IGFはこのままアントニオ猪木の理想郷となり、猪木は高笑いして日本のプロレス界を見下ろすようなことになるのだろうか。