バトル・ニュース

2011/06/08


武藤の激怒と飯伏の涙


 何の因果だろうか。
 5・29神戸大会の試合前の控室で、TARUに顔面を殴打されたスーパー・ヘイト(平井伸和)が、試合後に急性硬膜下血腫で倒れて開頭手術を受け、現在も意識が戻っていない状況の責任を取り、武藤敬司が全日本プロレスの代表取締役社長を辞任することを7日に記者会見を開いて発表した。

 事件発覚当初から、社長である武藤が公の場に出て来ないことに、批判があったことは確かだが、いきなり社長を辞任することを発表したのはいささか驚いた。
 しかも武藤は最初にこの事件を報じ、その後も連日一面で報じていた東京スポーツを批判したという。何でもかなり行きすぎた記事や取材方法があったということで、「金輪際、東スポ取材拒否!」と珍しく会見の場で語気を強めながら言い放ったとか。

 今回起こってしまった事件はもちろん悲しいことだし、起きてはいけないことだが、こういう事件が起きて辛い団体側が、事件を報じたマスコミを取材拒否のような事態に陥ることも、1マスコミの端くれとしては非常に悲しいことだ。
 しかも8月には東京スポーツ主催によるチャリティープロレス興行『ALL TOGETHER』が開催されるのに、そこに参加を表明している全日本プロレスの武藤が、東スポを取材拒否。どっちがいい悪いという問題ではなく、「ALL TOGETHER=1つになろう」という大会名が、こんなに悲しく聞こえるとは思わなかった。

 一方、同じ日に行われた新日本プロレスのディファ有明大会でも、武藤の大激怒に匹敵するくらいの珍しいことが起こった。
 ジュニアヘビー級の祭典『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』の期間中なのだが、この日DDTの飯伏幸太とみちのくプロレスのザ・グレート・サスケが激突する公式戦が組まれていた。

 元々、飯伏とサスケの初遭遇ということで注目度の高いカードだったが、珍しいこととは試合後の飯伏が、何と涙を流したことだ。
 飯伏とはファンの方ならよく知っていると思うが、基本的に飄々としている。楽しそうにしているのは分かるが、怒ったり、悲しんでいる姿はあまり見ることがないレスラーだ。
 そんな飯伏がプロレスラーを目指すキッカケになったのがサスケだったらしく、言わばサスケは憧れの存在。

 その憧れの存在であるサスケとこれまで絡みがなかったことも驚きだが、試合後、飯伏は「自分の夢が叶いました」「感無量です。言葉が出ない」と、感極まった感じでコメント。
 そこまで飯伏の思い入れがあったのなら、DDTのビッグマッチあたりで実現してもよかったような気もするが、両者が同じ時期にメジャー団体である新日本のリングに上がり、飯伏の願いを叶えるために組まれたカードではなく、あくまでも公式戦の1つとして実現したというのも、ある意味で運命的か。

 武藤の激怒と飯伏の涙。どちらも非常に珍しいことなのだが、恐らく世間一般も含めてニュース性が高く、関心が高いのは武藤の激怒のほうだろう。だが、飯伏の涙だって「頑張っていれば、いつか願いは叶う」ってことで、今後プロレスファンの間で長く語り継がれていってほしい。